お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「おはよう」
「……はよ」
翌日、いつも通りに起きて朝食の準備。
だが、慎君の顔が見れない。
トーストしたパンと、ハムエッグを乗せたお皿を運んでも。
コーヒーを出しても、目を合わせれない。
昨夜、私はヤヨとの話をした。
慎君は、“辛かったな。1人で苦しかったな”と言ってくれた。
その後の記憶が曖昧で、きっと私は泣き疲れて寝たんだろう。
起きたら、慎君が隣で寝て居た。
しかも私……、彼のシャツをぎゅっと掴んでた。
これは謝るべき……?
それとも知らん顔?
「…………」
私のシングルベッドで、さぞや寝にくかっただろう。
その事についてだけ、謝ろうか……。
「今夜、来る……?」
「気まずそうだな」
「いや、そんな事は……っ」
気まずいと言えば気まずいけど、私が嫌と言うのもおかしいでしょ?
チラッと目が合い、即座に逸らす。
テレビを点け、コーヒーを一口。
「ごめんね。昨日は何か……」
「心希が知ったら、煩そうだな」
心を落ち着かせて謝るも、慎君は特に気にしてる様子はない。
気にされても恥ずかしいだけ。
しかし、気にされないと、自分が女としてどうなのか、首を傾げたくなる。
人間て我が儘。
いや、私が我が儘だ。
慎君が私を女として見てないという事は、考えればわかる。
じゃなきゃ、今まで何もなく過ごせてるわけないのに。
我が儘どころか、馬鹿だった。