お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「一緒にご飯食べよ?1人で食べても、味気ないし……」



「心優が良いなら」



一言余分だが、けど1人で食べても本当に美味しくない。

かと言って、コンビニ弁当などを買っても一緒の事で。

気まずかろうが、慎君と食べた方が、確実に美味しい筈。

自分の為に作るのと違って、気持ちが込められるからね。



「歯磨いて来る」



「あ、服出すね」



先に朝食を終えた慎君。

私はお兄ちゃんの部屋へと行き、箪笥からパーカーと黒の裏地毛のジャージを引っ張り出した。

滅多に着ないお兄ちゃんの服。

慎君がこうして着てくれるから、虫に喰われず、たまに洗濯が出来て有難い。

そして、何より教師であってくれて良かった。

サラリーマンだったら、こんな服では出勤出来ないからね。



「靴下」



「はい」



さすがに靴下は、新品を渡した。

プライベート用に買ってる物。

ハイソックスではない為、何の躊躇いなく履いてくれた。



「着替え何着か置いといたら?」



「面倒」



…言うと思ったよ;;

それに私が言う事じゃないけど、慎君と結婚する人は、献身的な人じゃないと務まらないだろう。

面倒くさがりだし、料理とか一切出来ないし。

前にお兄ちゃんから聞いた話だと、アパートの掃除は、その時々の彼女やお兄ちゃんがして居るらしい。

洗濯だけ辛うじてするらしいけど、車で数分の実家に持って行ってして貰ってるとも聞いた。
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