お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
高校・大学と同じだったお兄ちゃんと慎君は、自他共にイケメンで、頭も良かった。

そのせいかかなりモテて居た2人だけど、女遊びはしない。

むしろ、見た目に反するほどの元カノの数。

その一途さがまたモテたのかも知れないけど、良く我が家で呑んでは、追っ掛けたちの愚痴を溢してたっけ。

幼い頃に両親を亡くし、母方の祖父母に育てられた私とお兄ちゃん。

しかし、小学校6年の時に祖母が他界。

祖父も追い掛けるように、私が中学1年の時に亡くなってしまい、それからお兄ちゃんと2人だけど、慎君はしょっちゅう我が家に入り浸ってるしで寂しくはなかった。

それが原因か、私と慎君が付き合ってると噂が流れたのは半年前。

人の噂も何とかって言うのに、消えるどころかからかわれて、本当に馬鹿らしい。



「――以上。真っ直ぐ帰れよ」



机に肘を着いて、頬杖を付きながらボーッとしてると、どうやらホームルームは終わったらしい。

話は聞かずとも、プリントが配られる為、特に困りはしない。

いざとなれば、慎君にラインをすれば良い。

コートを着て、スクールバックを肩に下げて昇降口へと向かう。

普通科と、商業科のあるこの高校。

でも、商業科は別校舎。

多からず、少なからずの集団の中で何とか靴を履き替えた。

マフラーをキツく巻き、寒さに身を縮めながら校門を潜る。

スーパーへ寄ってから、住み始めてから1年半のマンションへと帰宅。

2LDKの、広くも狭くもない我が家。
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