お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
≪良いんじゃねぇの?俺には関係ねぇし≫

慎君からの返事は淡々としており、あまり問題はなさそうだ。



「けど、どうして山嵜先生とユリちゃんがデートしてたのかな?」



「それ、いつの話?」



「2日前。まさか……“不倫”っ!?」



「「「『不倫――ッ!!?』」」」



…あーあ、大騒ぎになっちゃった。

本当、こういうの面倒くさい。



「うちのお兄ちゃんと呑んでたが、いつ人妻と会ってと言うの?」



「密会なんて簡単よ!」



「経験あるの?」



「……ない」



「なら、そうやって話を大きくするような発言は止めたら」



「…………」



“不倫”と騒いでた女子を黙らせると、教室内が静まり返った。

溜め息を吐きながら、ラインのお兄ちゃんのタイムラインを引っ張り出す。

無許可でこう掲載されるのは嫌だけど、時には役立つ。

良い証拠になるであろう、隠し撮りされた私と慎君のツーショット。

慎君はテレビであろう方向を見ながらビールを呑み、私はサラダを取り分けてる。

無音カメラで画質は通常より劣るも、顔はハッキリしちゃってる。



「じゃあ……、ソックリさん……?」



「岡本さん、訊いてくれない……?」



「そういうのは自分で訊いて」



「「……でもっ……」」



でもと言われても、私が訊くのはおかしな話でしょ。

だいたい訊いたところで、私が慎君に怒られる。

“面倒くさい話すんな”ってね。
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