お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「おい。チャイムなっただろ。何してる」



「「「『…………』」」」



予鈴、本鈴となっても、着席しようとしなかった2人。

何故かみんなの視線が私に送られる。



「自分たちが訊きたい事でしょ?自分たちで訊きなよ」



「何の話だ」



「……先生?先生は、その……」



「不倫、したりとか……」



「話が見えねぇけど」



「……面倒くさいな」



私たちのところへやって来た慎君。

モジモジし、話が進まないせいか、私が話す事になった。

溜め息を大きくわざとらしく吐き出し、慎君に事の成り行きを説明。



「お前は馬鹿か」



「何で私?」



「お前、白百合の結婚式に出ただろ」



「……んー?」



慎君に頼まれて、一緒に結婚式に行った事は確かにある。

リングボーイだったかな。

新郎新婦に指輪を渡す役目だったらしい慎君の甥っ子が、新郎である従兄と喧嘩をして嫌だとごねて、身内に務まる子供が居ないと、私に頼みに来たんだ。



「あぁ!そういや、慎君の従兄弟の新郎さんも、教師だったね;;」



「まぁ、10年前だからな」



断片的にしかなかった記憶が、ポンッと映像のように思い返された。

しかも同じ学部の先輩である事は確かだけど、従兄弟という事は抜けてた。

奥さんが、保健室教諭の白百合だとも。



「それに、似てたよね。慎君と」



「祖父ちゃん似だからな」



2人には誤解が解け、私は記憶が整理されてスッキリ。
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