お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「成績も生活態度も悪くないと思ったが、誤算だったかも知れないな」



「…………」



「山嵜先生がお兄さんの友達だからと、甘えてないか?それとも、甘やかされてるのか」



「私が将来どうなるか先生は関係ないじゃないですか!何でわざわざここで山嵜先生の名前を出す必要があるんですか??」



「いや、それは……っ;;」



何が甘えてるのか。

むしろ、私の方が甘やかしてると思う。

服や靴下を出して、ハンカチを準備したりと。

そんな事、宮前にも職員室でも話すつもりはないけど、戸倉だけでなく、ここでも“お兄さんの友達”と言われたら腹が立つ。

それが私の弱味とか思ってるのか。



「悪かった!なっ?;;」



「……失礼します」



私が怒ると思わなかったのか、動揺してる宮前見ずに、壁時計を見ながら職員室を出た。

案の定、購買の惣菜パンは売り切れ。

オマケに今日は菓子パンも売り切れたらしく、ボトル缶のホットコーヒーだけ買った。

無人の購買前のベンチスペースに腰掛け、窓から校庭を見つめる。



「何だった?やっぱ退学か?」



「そんなわけないでしょ。てか、ありがとう」



「別に」



どこからか現れた戸倉。

まぁ、ストーカーではないから良い。

差し出されたコンビニの袋には、鮭と梅のおにぎり。

ヘタなものを買われるより、こう言った定番は有難く受け取れる。

コーヒーでお腹をいっぱいにしなきゃと思ってたし。
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