お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
『そう聞いてたの……。けど、今日……、心希の会社に行く用事があって行ったら、鞄があって、嘘吐かれてるって知ったら私……っ』



「まさか……;;」



どうしてそんな嘘を吐く必要があるの?

誰かがたまたま置いてたんじゃないの?

そう言って慰めても、風花ちゃんは納得してないのか、曖昧な返事しかしなかった。

何だか私も疑い持ってしまい、お兄ちゃんの携帯に電話をしてみるも、電源が切られてる。

海外出張の時は、会社から持たされてる携帯しか使えない。

海外で使える契約はしてないしね。

当然と言えば当然なんだろうけど……。



「もしもし。いつも兄がお世話になってます、岡本の妹ですが……」



私はお兄ちゃんの疑いを晴らしたく、会社に電話をかけた。

部署に直通の電話番号は聞いてた為、苗字だけでも通じる。



『はい、お世話になっております。少々お待ち下さい』



「…………」



“少々お待ち下さい”……?

日本どころか、そこにお兄ちゃんは居るの?

事務の人が、はっきりと言い放った言葉に、沸々と込み上げる怒り。



『お待たせ致しました。大変申し訳ございません。岡本さんは出張中でございました』



「いや、居るから待たせたんですよね?兄を出して貰えませんか?」



『ですから、岡本さんは……っ』



「会社に乗り込まれたいか、電話に出るか、兄に訊いて貰えますか?」



『……えぇ……;;』



…居るんじゃん!!
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