お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「……ただいま?;;」



「“ただいま”じゃねぇよ」



無言が続いてると、お兄ちゃんが帰って来た。

寒かった筈なのに、冷や汗タラタラ。

引きつる笑顔で私たちに謝りながら、慎君の隣に腰を下ろしたお兄ちゃん。



「心優?;;」



「先に風花ちゃんに電話したら?泣いてたから」



怒ってる。

けど、たった2人の家族、兄妹。

大きな喧嘩などしたくない。

怒り過ぎると疲れる。

お兄ちゃんも私の気持ちを察してか、素直に風花ちゃんに電話をし、謝り、「訳はまた今度」と言って電話を切った。



「お前には山ほど言いたい事があるけど、とりあえず心優の進路について話したい。学年主任が相当、機嫌が悪いからな」



「は?学年主任がなんて言おうと、大学行くんだろ?」



「心優は認めてない」



「認めてないって、時間ねぇじゃん!心優、受験するんだろ??」



「……わかんない」



キッチンへと行き、お兄ちゃんの分の箸やビールを取りに行く。

お兄ちゃんは珍しく私を睨みながら、「大学へ行け」と繰り返す。



「行って何を学べと?」



「やりたい事なく働くより、為になる事がたくさんあるだろ」



「途中で辞めたら?」



「辞めさせるか!」



「私はお兄ちゃんに育てて貰ってるよ?けど、言いなりの人生は絶対に嫌!」



「だったら、卒業してからどうするかちゃんと考えろ!フラフラした生き方はさせねぇからな!」



私だって、フラフラするつもりはない!
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