お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。



「大学進学で、二言はないな?」



「えぇ。もう、何だって良いので、兄や先生方が仰る大学で良いです」



「わかった」



翌日、私は約束の放課後に、宮前に進路希望調査票を提出した。

一晩、寝ずに考えたら、就職だろうと進学だろうとどうでも良くなってしまった。

宮前はどんな理由であれ、満足したのか、私の担任である慎君に「良かったですね」と渡す。



「失礼します」



何が良かったのか。

生徒の気持ちなんて関係ないんだね。

けど、これで呼び出しはなくなるし、ある意味、私も良かった。



「ちょっと待て」



頭を下げ、職員室から出ようとした私を止める宮前。

もう用件は済んだ筈。

「何か?」と振り返ると、手にししてた定規で差して来た。



「お前、そんな派手な下着で面接に行くなよ」



「……は?」



「「「『宮前先生!?』」」」



学校は冷暖房完備で、今日は教室にコートや鞄を置いて来たし、ブレザーのボタンは全開。

カーディガンを洗濯してしまい、着てないけど透ける筈はない。

白のシャツに透けにくい、ベージュのキャミソールをしてるし、第一、私は派手な下着を持ってない。

なのに、この教師は何を言ってるのか。

女の先生を筆頭に、周りも引いてる。



「髪の毛と良い、最近ちょっとたるんでるぞ」



「何が言いたいんですかっ!?」



私に何か恨みでもあるわけ?

たかが数日の進路指導の意見の相違で、私そこまで嫌われるような事した?
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