お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「宮前先生!岡本さんは模範的な子です!ご自分の発言の意味をわかってますか!?」



「よーくわかってますよ。岡本は近頃、校則を違反してる」



「岡本さんはしてませんよ!」



私の居る場所のすぐ傍にデスクがある白百合が、宮前に反論。

私を背に隠しながら、怯む事なく。



「担任として、僕も白百合先生と同意見です。岡本は、決して校則違反などしてません」



慎君も立ち上がり、宮前にそう言ってくれるも、引く事はない。



「では白百合先生、保健室で確かめたら良い」



「そんな事、出来ませんっ!!」



「だいたい、岡本は明らかにシャツの中にインナーを着てます。どうして見えてるんですか?宮前先生には透けて見えるんですか。それとも、覗かれました?」



「覗くわけないだろ!透けてるじゃないか!」



「……先生。ちょっと」
  


「ん?」



私は白百合を職員室の隅に連れて行き、胸元に手を入れて下着を見せた。

白百合は私のシャツのボタンを止めて、元の位置に戻る。



「宮前先生?派手と仰る彼女の下着の色、教えて貰えますか?」



「赤とピンクだ」



「そうですか。へぇー」



「何だ!」



慎君が私の所へやって来て、ジャージの上着を掛けて来る。

昨晩も泊まってた慎君。

お兄ちゃんの服の為、躊躇いもなく袖を通す。

睨み合う白百合と宮前。

この騒ぎに、大人しく、陰の薄い教頭が、焦りながら立ち上がった。
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