お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
冬ながら、額に汗を滲ませながらやって来たお兄ちゃん。

私を見るなり、抱き締めて来る。



「お、お兄ちゃん?;;」



「嫁入り前の妹に……」



「…………;;」



「俺の妹に何してくれたんだッ!!!!」



肩で息をしながら、慎君よりも怒りを露わにしたお兄ちゃんに、私の制止を振り切り、一度だけ会った事のある宮前に詰め寄った。

抱き締めて来たくせに、思い切り振り払われた私の身体は、ふらふらと慎君の背中に助けを求めて揺れを止めた。



「やべーな」



「……かなりね;;」



冷静さを完全に取り戻した慎君は、いつも通り。

お兄ちゃんを見守ってる。



「兄貴である俺も、年頃の妹には気を使ってるのに、てめぇは何だ?親か?他人だろ!それを変態か!仕返しかしんねぇけど、覗き?更衣室のドアを開けるどころか、身体を覗いた?警察呼んでやろーかっ!!」



「――申し訳ございませんでした!!;;」



お兄ちゃんの勢いに、敗北を認めるかのように土下座をする宮前。

それでも、お兄ちゃんは許さないと言わんばかりに、教頭と校長に怒鳴る。



「心希。嫌な思いをしたのは心優で、一番ショックを受けたのも心優だ。騒がず、冷静に話し合え」



「……あぁ」



慎君がお兄ちゃんに声を掛け、落ち着かせる。

校長室に促され、黙ってついて行くお兄ちゃん。

長いジャージの袖に隠れた拳を開くと、身体の力が抜けた。
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