お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
・関係の変化



「大学、決まって良かったな」



「どうも」



「お前、いい加減に俺の顔見ろよ」



「用ないだけ」



お兄ちゃんの罠に嵌まって、数週間。

大学も受かり、自由登校となった2月。

たまたま登校したら、まさかの戸倉と被った。

退屈な授業を受け、お昼で帰ろうと思ってたのに捕まった。

連絡先は交換してない為、学校の外ではしつこくされてない。

ただ、やっぱり告白されてからの接し方がイマイチわからなかった。

慎君との事も言える筈もないし。

デートをしたり、キスしたりと、恋人らしい事はしてなくても、関係はちゃんと恋人なわけで。

戸倉に気を持たせるような真似もしたくない。

お兄ちゃんの罠に嵌まったと言っても、会えない日は電話やラインで1日一回は会話をしたいと思うのは、自覚はあまりなかったとしても、私なりに慎君が好きなんだ。

“癪だけど、もう心希の罠に嵌まって良いか?”と、彼らしい、でも曖昧な告白だった。

私も、お兄ちゃんに嵌められての付き合い始めたとなれば、嫌だ。

しかし、罠以前に気持ちがあってこその今。

“お兄ちゃんの罠”とは、どちらともない照れ隠しの言葉に過ぎない。



「卒業までにはさ、一度で良いから、先生とご飯を食べるか、デートしたくない??」



「したーい!けど、隆寬ともしたいなぁ」



「「…………」」



…どっちも無理なんじゃない?
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