お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
だけど、そもそもの問題で、この学校の普通がズレてるから仕方ないのか。



「岡本さんさ、頭良いからわかるでしょ?私、本当に山嵜先生が好きなの。だから頼んでよ。卒業したら、もう会えないかも知れない。記念に残る事をしておきたいの!岡本さんしか居ないんだよ!」



「……自分が、居るよね」



人に頼まなくても、自分が居る。

自分の口がある。

さっきから“岡本さん岡本さん”て、もう煩い。

私と慎君の関係を、叫び返したくなる。



「いや、言えないから頼んでるのっ!」



「慎君にキャーキャー言う延長で声掛ければ?」



「……今日はヤケに断るわね」



「…………」



「え?何っ!?」



ミーハー連中の中心人物の1人で、慎君狙いの“ナギサ”の鋭さに、私は表情を崩さないようにしながらも、顔を背けた。

私たちについて来てない様子の周りが騒ぐも、2人して黙りを決め込む。



「岡本、帰るんじゃなかったのか?」



「うん、帰る」



どうこの場から離れようか考えてると、戸倉による助けが。

本人は助けるつもりで言ったかどうかはわからないけど、私は頷き、鞄を手に教室を出た。



「岡本さん!」



正午を回り、温かな陽気となり、カーディガンも必要ない程の外へ出ると、ナギサが追い掛けて来た。



「何?」



「うん。2人で話した方が、良いかと思って」



ナギサは鞄を持ってる。

これは、学校の外で席を設けて話すという事か。

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