お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
まぁ、用事があって早退するわけではない。

駅前のファミレスで、食事しがてら話す事にした。

日替わりランチの唐揚げ定食を頼み、アイスコーヒーを飲みながら向き合う。



「岡本さん、ごめんね……。先生と、付き合ってるんじゃない?」



何を話せば良いのか考えてると、謝られ、そしてやはり見透かされてたと知る。

二、三度首を振り、気にしてない事をアピール。

しかし、付き合ってる事に頷きながらも、バレてしまった事が悔やまれる。



「先生との事は、誰にも言わないから安心して?それに、私は人の男を狙ったりしないから」



「…………」



「あ、信じられないでしょ?信じて貰えない事は自覚してる。けど、私も彼氏を取られた事あるから、したくないの。最低最悪と罵った女と同じ真似なんかしたくないじゃない。だから、周りになんて言われようと諦めるし、次を探す」



「ミーハーな連中と居る割に、大人なんだ?」
 
 

「あの子たちと居ると、楽なの。自分で騒がなくても、盛り上げてくれて。大人しく居たいけど、孤独も嫌だから」



「我が儘」



「どうせ我が儘よ。それでも寄って来る人が居るのも事実」



「虚しくない?」



何故、私は今、普通に話せてるんだろう。

全部が全部、似てるわけじゃない。

けど、どこか似て居て楽な私が居る。

気を使わなくても良い。

ヤヨとはまた違う、安心感がここにはあった。
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