お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「精神年齢の合う人が居なかったから、虚しさとか考えた事もなかったかな。岡本さんじゃ、私には大人過ぎたし」



「そう言うわりに、私を何度も使おうとしたよね」



「だって、あの難しい先生と知り合いだし、仲が良かったから。立ってる者は親でも使えって言うでしょ?それでよ。けど、今日はいつもと反応が違って、私もしつこく行けなかった」



「まぁ、バレたけど、助かったかな」



あの時、しつこくされたら、私は自ら暴露したかも知れない。

私から言わなくても、知られたらただでは済まない事でも。



「ねぇ?友達にならなくても良い。けど、心優ちゃんて呼んでも良い?」



「好きに呼んでくれて良いよ。生憎、友達は募集してないけど」



「……わかってる」



「…………?」



自分から言っておいて、何故か哀しそうな顔をして頷いてるナギサに、私は首を傾げながら、運ばれて来た唐揚げ定食に手をつける。

フォークとスプーンを器用に使い、ミートソースのパスタを食べるナギサは、いつもの表情に戻って行く。

さっきのは見間違いだったのか。

それとも、気持ちの変化が早いだけか。



「やっぱ、ファミレスの料理は安定!美味しいよね!」



「……あんた、何者なの?」



「えっ――?」



「……いや、別に」



…何でだろう。

私、ナギサを知ってるような気がする。

ナギサもナギサで、私を知ってる気がした。
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