お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「心優ちゃん、どうかした?」



「だから、別に何でもないよ」



「ごめん、カミングアウトして良い?」



「は?何?急に」



「私、沙羅紗の妹」



「……何??」



「お姉ちゃんの事、嫌いでしょ?だから言いたくなくて……。それに、彼氏を取られたって、お姉ちゃんになの。だから、心優ちゃんの気持ちもわかるって言うか……」



「……なるほどね」



だから、私を知ってるような気がしたんだ。

どこか癪に障る感じでも、大人にも見えた。

それは、沙羅紗さんと似てて。

けど、反面教師だったからか。



「私の名前は五木凪紗。苗字まで、知らなかったよね」



「うん」



興味がなかったとは言え、まさかの……。

友達は募集してないと言ったけど、益々、友達にはなれない気がする。

凪紗も自身の姉だろうと、沙羅紗さんが苦手かも知れない。

けど、もし凪紗と友達になったとしたら、沙羅紗さんと繋がってるようで嫌。



「我が姉ながら、本当に男癖が良くない。先生に惚れたのも顔から出し、心優ちゃん、気分良くないよね」



「そこはもう過去の事だけど、未だに私たちに関わろとするのはね……」



お兄ちゃんの事を、いちいち言わないで欲しい。

慎君が好きなら、好きで居れば良い。

でも、お兄ちゃんは関係ない筈。



「男友達も彼氏も、イケメンで揃えたい人だから……。本当に、ごめんっ」



凪紗が謝らなくても良いのに。
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