お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
「あ、お姉ちゃんにも何も言わないから、先生と仲良くね」



「あ……、うん」



「まぁ、お姉ちゃんは1人暮らしだし、滅多に会わないから、話す暇ないけど」



「反面教師も大変そう」



「そうでもないよ。悪い見本が、近くに居るんだから」



「彼氏を取られた事、今でも恨んでるんだ?」



「当たり前じゃない。何が悲しくて、お姉ちゃんに取られなきゃいけないの?“あの男は止めときな”って言っといて、奪うなんてあり得る?うちは4姉妹で、間に居る2人の姉も略奪されてた。けど、末っ子の私にはないと思ってたのに、この座間。食べ物と女の恨みは恐ろしいと、教えてあげたい位よ」



「そう;;」



…私には既に、恐ろしいけど;;

般若のような怒り顔で、パスタにフォークを刺す凪紗に、私は苦笑いしか出来ない。

沙羅紗さんを私を見下すのは、きっと妹への態度でもあったのだろう。

連絡先をブロックし、完全に関わらないようにしないと。

面倒な事はご免。

関わりたくない。



「取られないようにね」



「そこは心配ない」



慎君は以前から、沙羅紗さんへの好意は持ってないから。

それは自信を持ってるし、慎君を信用してる。

取られる事は決してない。

取っても、奪い返すだけだし。




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