お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。



『個表があるし、五木も言ってた』



「知らないわけないよね」



『不安なのか』



「ううん。慎君の事、誰よりも信じてるから、不安なんてない」



--ガチャ…ッ



『じゃあ、何でそんな話を?』



「来てたなら言ってよ!」



「サプライズ」



その夜、お兄ちゃんは残業。

1人部屋でのんびりとしてると、電話をしてた筈の慎君がやって来た。

携帯を切りながら、ベッドに座る私の隣に腰掛けた慎君。

“サプライズ”と言われても、どうしたら良いのか。



「で?本当に不安はないのか?」



「うん。奪われたら、奪い返す。私は、慎君の全て、好きだから……」



見た目で好きになるなら、知り合った時から好きだった筈。

でも私は、全てを知って、理解した上で好きなんだ。

誰でもない、代わりの効かない慎君が。



「……恥ずかしい事、言わせないでよ……っ」



「自分で言ったんだろ」



「そうだけど……っ」



恥ずかしさと、慎君の意地悪さにムッとしてると、目が合う。

膨れた頬を片手で潰され、突き出した唇が強調されて、不細工だろう。

しかし、お構いなしに重なった唇。

手が離れ、驚く私の後頭部へと回った。



「もっと恥ずかしいだろ」



「……平気、だもんっ」



おでこが重なり合い、恥ずかしさがピークを越える。

強がる私の肩を引き寄せる慎君。

余裕に見えた彼。
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