お兄ちゃんの罠に嵌まりまして。
でも、見えただけだった。

心なしか、慎君の鼓動が早い。

胸に寄せた耳に聞こえた心音が、私と同じように忙しない。



「慎君も、恥ずかしいの?」



「違う。まだ18歳のガキだと思ってたのに、惑わされてる」



「らしくないね?」



「うるせぇな」



付き合い始めてから、初めて恋人らしい時間の訪れ。

恥ずかしい。

ドキドキ、好きが止まらない。

私が慎君を惑わせてるなんて、全く自覚なんてないけど、お兄ちゃんの親友。

親友の妹という関係は、もうないって事だよね。



「お兄ちゃんの罠に嵌まって良かったね」



「未だに癪だけどな」



「それは、私も」



お互いに、好きだと気付いて居なかった時。

2人の間に居るお兄ちゃんが見抜き、企んだあの日から、私たちは変わり、今を迎えた。

けど、嵌まったわけじゃない。

嵌まってあげたんだ。

しかし、今はもうどっちでも良い。

私は慎君が。

慎君が私を好きになってくれたからこその恋人。

先の事は、誰も知らない。

私たちも、どうなるかはわからない。

ただ、好きな気持ちを大切に、私たちらしく歩いて行くんだ。

お兄ちゃんに動かされず、自分たちで動いて行く。



「心希の事だ。次は同棲でも企むかもな」



「じゃあその前に、計画だけは、立てておく?」



「それはそれで、俺ららしいかもな」



お兄ちゃんを先読み。

もう、罠には嵌まってあげない。

私には、どこか抜けては居るけれど、お兄ちゃんよりしっかりした彼氏が出来たので。




    - END -




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