さかさまさか
あの日
あの日から、私たちは話さなくなった。
山田んち、親父逃げたらしいよ。
駅前のキャバ嬢と。
人の噂は早い。
事実だし、しょうがない。


『春田どう思う?』
緑ちゃんが聞く。
『別に』
『春田、付き合ってんでしょ。』
『付き合ってないし』
『2人で手繋いでるところ見たって』
『繋いでないし。』
何それ?
来たよ!山田

『山田さん』
『春田と付き合ってんの?』
『ないよー。』

『家色々大変でしょ。』
『あぁー。』
『なんかあったら言って。』
『じゃぁ、お金かして~。三百万円』
『無理だし』
『だったら、簡単にいうなよ。』
『ごめん。』
と緑ちゃんがいい、泣き出した。

私はカバンを持って、教室から出ていった。
いつも逃げこむ場所がある。
美術室だ。

『なんかあった。』
ケンジがいた。
『なんもないよ』
『言われた。家の事。』
『うん。』
ケンジが、ポンポンと頭を叩く
『泣きなよ。』
大泣きした。

しばらくすると、『帰ろっか?』
とケンジが言った。
『うん』


< 10 / 27 >

この作品をシェア

pagetop