さかさまさか
タクシーの中で電話が鳴る。
『ラーちゃん。こないだの記事出るからね。』
『うん。』
『やった!とかさ』
『ケンジ、お父さんに返してもらった。』
『うん。』
『奥さんいて、綺麗だった。もっと、ブスだったら良かったのに』
『うん。15日』
『わかった。』
『春田君に言えば。』
『いいよ。』

なぜだか忘れたはずの番号を自然に押していた。

留守番だった。
安心した。

変わってるか

バカだよね。
あいつも、新しい世界で生きてる。


最寄り駅につき、黒メッシュのポーチから一万円出した。
お釣りいりません。

ドライバーさんは、ポーチを見てギョッとした。



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