さかさまさか
『その人は丈は?』
『私くらい。』
嬉しそうに池尻先生が見ている。


『あっ!』
『何?』
『これ?』
『こんなに、何?何?』
『私、あの人に返してもらったの』
『えっ!?』
『ケンジがゴルフ場で、見つけた』
池尻先生は、気まずそうに自室に帰った。
『何してんの?あの人は?』
『ラブホと、ラウンジ、』
『あの女と?』
『違う人だった』
『三ヶ月で捨てられたって。』
『へぇー。』

『あとは、いくらかわかんないから』
『もういいよ』
ときつい口調でお母さんが怒った。
『私、意地悪だよね。』
『何が?』
『先生もいるのに。』
『うん。』
『本当は、再婚も嫌だった。』
『お父さんの方がいいってこと。』
『そりゃ』
『あんなのでも。』
『うん。正直、新しい奥さんが途中で来るまで、会って、話して、楽しかったよ。』
お母さんは、泣き出した。

『遠慮してたの?』
『ずるいって、正直思った。』
『なんで、あの時?』
『この世の終わりみたいな顔して、やっと掴んだ幸せ。
辞めてって言える。』
それを、隣の和室で聞いてた。
ばぁばぁが、こう言った。

『早く、大人のふりさせてごめんね。』
私は泣いた。
ママも泣いていた。
『気付かなくて、ごめんね。』
『いや。』


ばぁばぁは、泣きじゃくる。私を昔、つまずいたり、失敗した時の様に、ぎゅーと抱きしめて、『さくらは、ばぁばぁの宝物』と言ってくれた。

『ばぁばぁ。』
『なんでしょ。』
『ありがとね。』
『あと、お父さんも、ばぁばぁさえ良ければ一緒にって』
お母さんがすかさず言った。

『お義母さん、居て下さい。あやめも、あの子守唄がないと困るし、何より私が寂しいから。ケンカ相手いないと』

『いいのかい?』
『はい』
『いい子にしますから。』
と、ばぁばは涙目で笑った。

騒ぎに気付いた、あやめちゃんも居間に来た。
池尻先生も。
『パパ、母とおばぁちゃんと、あやめちゃんをよろしくお願いします。』

『はい。さくらちゃんも私の家族になってくれるかな?』
『はい。』

『いいのかい?さくらちゃん。それ!』
『あっ!ママ早く!』
『お義母さんも、手伝って!』
『はいよ~。』
と、ばぁばぁが腕まくりする。

『ボケてないじゃん』と小声で言うと、ママが、『胸の仕えが取れたんじゃない』
『また、いじめられるよ』
『そん時は、あの人の家に送ってやるわ。』
と言うと2人で大笑いした。

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