さかさまさか
返してもらいたいもの。
ケンジから電話があった。
『ラーちゃん、見つかったよ。』
『誰がぁ。』
『今、取り引き先の人とゴルフ来てんだけど。』
『お父さん!』
『次の組が、らしき人たちのグループだから、間にあうよ』
『住所教えて!うん、うん、山の手カントリーね。』
『会社の人には、お腹痛いって中抜けしたから、待ってるわ』
『ありがとね』

意外に近くにいたんだ。
私は、お父さんに返してもらいたいものがある。
お金と希望。
あとは、少しの期待。

電車を降りると、山の手カントリー行きのバスが運良く巡回していた。
ご予約名は?と聞かれとっさに『スターライツ出版』とケンジの会社名を言った。
あぁー。どうぞ。

私は、席につくとどうしょうもない父親でも会えるのが嬉しかった。

バスで15分。
着いた。
吐き気と心臓がザワザワしていた。

ロビーに着くと、『山田!』とケンジが手を挙げた。
『なんで?』
『怪しまれないよーに。』

もうすぐ出てくるよ。





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