空が笑った




「見て! 可愛いでしょ! 今日届いたのー!」

心待ちにしている小学校の入学式を前に届いたランドセルを病院内を駆け回って見せびらかした。

その5人目の餌食になったのは、新卒入社し1年が経とうとしていた看護師の藤谷(ふじたに)


「そっかぁ。 瑠衣(るい)ちゃんもう1年生だもんね」

1年前はすごいドジばっかりやっていたのに、今ではそんなのはなくなり患者さんたちからとても好かれる頼れる看護師さんになっていた。

あたしの頭を優しく撫で去って行った。


入社したばかりはあたし達子供と全然変わらない幼稚さで舐められていたのに、いつの間にか大人な女性になり、子供の扱いもお手の物。


その後ろ姿に少し寂しくなった。

毎年沢山の人がこの病院で入退院を繰り返す。 仲良くなっても皆色々な形で去っていく。


扉を開けた先の、白いベッドに誰もいないあの瞬間はあたしにとってとても残酷な一瞬だった。


明るく去って行った皆も‘‘また来るね”と言って来た者はいない。

そりゃあそうだ。わざわざ病院に来るやつなんて見舞い以外そうはいない。





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