お前が愛しすぎて困る
3.
次の日、
いつも研究所へ行くより早く家を出た。
江梨子の自宅までは
高速を使わなくても20分で着く。
路駐ができて、
あまり人目につかない場所に車を止めた。
『着いた。』
LINEを送るとすぐ、
既読 になった。
しばらくして江梨子が姿を見せる。
車に近づいてくるその姿は
いつも俺と会う時の服装とは違う、
カジュアルな服を着た、
『母親』の姿をした江梨子。
少し辺りを確認してからドアを開け、
助手席に座った。
まだ昨日のショックが残っているのか、
無言で沈んだ表情。
うつむいて下を向いたまま黙っていた。
「…顔、見せて。」
黙ったままこちらに顔を向ける。
その顎を取って、左側の頬を確認した。
目尻の下が少し青白くなって腫れていた。
思ったよりはマシだな。
口には出さずに、
内心でほっと息を付いた。