お前が愛しすぎて困る
「勝手に見ないで!」
花南の問題は、
自分の部屋にいる俺なんかより、
物語を見られたことにあるらしい。
でもすぐに、
「あ、頭イタ〜っ」
と、ベッドに倒れ込んだ。
「ぶっ!!」
この女マジで面白い。
「はははっ!お前おもしろいな。
勝手に見て悪かったな。」
俺の笑いはしばらく収まらなかった。
大笑いする俺を、倒れ込んだまま見つめる花南。
『こいつ誰?』
『なんでうちにいるの?』
って思っているだろう目で見ていた。
「それお前が書いたんだろ?
スゲーな。
ホントに凄いと思う。
それ感動した。」
俺の正直なありのままの本心を伝えた。
花南は、
恥ずかしいのかそっぽを向いてしまったが、
俺を部屋から追い出すことはなかった。
その日から、
俺たちの不思議な関係が始まった。
学校では特に親しくはなかった。
でも、連絡はお互い頻繁に取るようになった。
大体は俺が花南のマンションまで行って、
そこから二人で出かける。
他県から上京したばかりの花南は、
驚くほど出不精で、
放っておくと出かけるのは学校とスーパーとコンビニ。
それとレンタルビデオ屋のみ。
だから俺の楽しみは
「花南をいろんな場所に連れて行くこと」
になっていた。
中でも花南の一番のお気に入りが
「映画館」だった。
田舎町の花南の地元には、
大きな映画館はなかったらしい。
初めて映画館に行ったときの
花南の隠しても分かるほどの興奮は
見ていて面白かった。
本人は「まあまあ。」なんて強がってたけど、
それから見たい映画館はちゃんとこっそりチェックしてる。
そんなとこはらしくなくて可愛いと思う。
ちゃんと連れてってやりたい。
そう思う。
他の女になら絶対にそんなことしねぇ。
花南にだから、
花南とだから。
「花南」という人間に、
どうしようもないくらい惹かれたから。
今まで出会ったことのない、
そんな奴に出会ったと思った。