お前が愛しすぎて困る
俺は煙草を吸いながら車を降りた。
履歴から花南の番号を探すと電話をかけた。
『...はい。』
普通に電話に出た花南。
「お前、何やってんの?」
『あ、うん...。』
「なんかあったのか?」
『ないよ。ないない。...すぐ行く。』
そう言って花南は通話を終了させた。
変な奴。
まぁ、変わってるのはいつものことだ。
俺はそう思って、車にもたれてそのまま花南を待った。
俺が立っている位置からは、真っ直ぐマンションの入口が見える。
花南が出てきたらすぐに見え...る...。
...え?
マンションから出てきた花南っぽい奴を見て、
俺は動きを止めた。
横断歩道じゃなくて、
いつものように左右を見ながら道路を横断してくるそいつは、
花南だけど、
花南じゃない。
花南みたいなそいつは、俺に気づいて立ち止まった。
「...何で、今日に限って車にいないのよ。」
バツが悪そうに少し俯いている。
やっぱり花南だ。
俺は何も言わずにじっと花南を見た。