お前が愛しすぎて困る
「...いたい。」
引っ張られたことに腹を立てたらしい花南が
腕を擦りながら不機嫌な声で呟く。
チラリと目をやると、いつものように外を見つめていた。
いつもと同じことをする、
いつもとは全く違う花南の外見。
それがムカついて、
訳が分からないイライラが襲ってくる。
「...チッ」
自分でも驚くくらい大きく舌打ちをした。
きっと花南にも聞こえていたと思う。
それから俺たちは、お互いに何も話さなかった。
静まり返った車内。
それでも、俺は相手が花南ってだけで気まずくはなかった。
ただ、
どうしてこいつがこんな恰好をしたのか。
誰にされたのか。
その疑問だけが頭の中を支配していた。