お前が愛しすぎて困る





「…ふーっ。」


マジで焦った。


外ではまだ犬たちがウロついていて、


花南を探して車に体当たりしていた。


その音に驚いたのか、


「きゃあっ」と花南が小さな悲鳴を上げる。


花南は相当怖かったのか、小さくなって震えていた。


「…とりあえず行くぞ。」


車を出そうとした瞬間、


左の脇腹の辺りに引っ張られたような感じがして目を向けた。


そこには震える花南の手があって、


花南は控え目に俺のシャツを握っていた。


ドクンッ


大きく心臓が鳴る。


『抱きしめたい』


そう思った。


抱きしめて安心するならさせてやりたい。


だけど、ここから移動することの方が先だと気付く。


「花南?大丈夫か?」


俺の問いにコクンと応える。


俺は震える花南の肩に腕を回すと、そのまま車を走らせた。




< 52 / 55 >

この作品をシェア

pagetop