お前が愛しすぎて困る




しばらく車を走らせ、


花南のマンションのすぐ近くの広い道路に車を停めた。


エンジンは切らずにハザードを出したままにしておく。



「花南。」


「...ん?」



花南の震えは収まっていたけど、少し疲れた表情をしていた。



「大丈夫か?」


「うん、大丈夫。


…でもホントに怖かった。」


「そうだな。」


「今時あんな犬いるんだね。


田舎とかにはいそうだけど、こんな場所にいるとは思わなかった。


...ありがとうね。」


最後の言葉は小さくて呟くような声だった。


こいつに怪我がなくて心底よかったと思った。


ふと花南を見ると、


忘れていた「今日の花南」を思い出した。


見たことないスカート姿で、


モデルの様なヘアスタイルをしていて、


透き通るように白い肌に完璧なメイクをしている花南。


これが「彼女」なら、


自慢して肩でも抱きながら連れて歩きたいって思うんだろうか。


でも、花南は俺にとっては「花南」で、


そんな気持ちには全くならなかった。


むしろその逆。


花南をこんなに変えた奴に沸々と怒りが込み上げる。







< 53 / 55 >

この作品をシェア

pagetop