お前が愛しすぎて困る
しばらく車を走らせ、
花南のマンションのすぐ近くの広い道路に車を停めた。
エンジンは切らずにハザードを出したままにしておく。
「花南。」
「...ん?」
花南の震えは収まっていたけど、少し疲れた表情をしていた。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。
…でもホントに怖かった。」
「そうだな。」
「今時あんな犬いるんだね。
田舎とかにはいそうだけど、こんな場所にいるとは思わなかった。
...ありがとうね。」
最後の言葉は小さくて呟くような声だった。
こいつに怪我がなくて心底よかったと思った。
ふと花南を見ると、
忘れていた「今日の花南」を思い出した。
見たことないスカート姿で、
モデルの様なヘアスタイルをしていて、
透き通るように白い肌に完璧なメイクをしている花南。
これが「彼女」なら、
自慢して肩でも抱きながら連れて歩きたいって思うんだろうか。
でも、花南は俺にとっては「花南」で、
そんな気持ちには全くならなかった。
むしろその逆。
花南をこんなに変えた奴に沸々と怒りが込み上げる。