お前が愛しすぎて困る




その感情が、


俺に礼を言って、


満足そうな顔で助手席に座っている花南に向かう。


「...その恰好、どうしたんだ?」


抑えていた言葉がとうとう口から零れた。


「...これ?これね..... 」


答えようとして、すぐに口ごもった花南。


言いにくそうに、なんて言っていいか迷っているようだった。


その姿にすらイラつく。


花南に対して、こんな感情を持ったのは初めてだった。


胸ポケットにしまっていた煙草に手をかけると、


イラ立ちを隠すようにライターに火を点けた。


視線を感じて花南を見ると、


花南の視線は俺の手元にあるライターに向けられていた。


なるべく花南を乗せているときは、


車内では煙草を吸わないようにしていた。


それを知っていたこいつには、俺の行動がショックだったんだと思う。



『もう私は大事じゃないの?』



無言の花南の目がそう言っているような気がした。


でも...俺は吸うのをやめなかった。


花南は怒ったように何も言わずにソッポを向いた。


「これ...いつも髪切ってくれる美容師さんが貸してくれた。」


「はぁ!?」


花南の答えが予想外過ぎてつい声を荒げてしまった。


驚いた花南が、ビクッと肩を震わせた。


「…悪い。」




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