お前が愛しすぎて困る
沈黙が車内に流れる。
最初に口を開いたのは俺だった。
「…なんで美容師が服貸すんだよ。」
花南の「どうってことない」って言い方も気にかかる。
「……実は。
一回だけってすっごくお願いされて、
しつこくて断り切れなくて、カットモデルっていうのやったの。」
はぁ?なんだそれ。
「カットモデルって髪切らせてやるだけだろ?」
「?ううん。カメラマンもいて何枚か写真も撮った。」
「はぁ!?」
俺の二度目の言い方に、花南もムッとした表情をした。
一瞬、車内に冷たい空気が流れる。
俺は「はーっ」とため息を吐いた。
「お前、もっと気をつけろよ。騙されてんじゃねーの?」
「騙されるってなに?別に騙されてないし。」
「そんなしたことない恰好させられて、らしくない髪型させられんなよ。」
「はぁ?そっちこそなに言ってんの?」
「写真まで撮られるなんてどう考えてもおかしいだろ?」
「おかしくないし。最初からそうやって説明あったもん。
保護者みたいな口きかないでよ。うざいっ」
「なんだと?心配してやってんだろ!?」
「別に心配されなくても大丈夫だし!
大体何も関係ないくせに口出ししないでよ!」
お互いどんどん口調がキツくて早口になっていく。
言うだけ言うと、花南はまた窓の外を向いてしまった。