今宵、闇に堕ちようか
「俺の携帯知らない?」
「知らなぁい」
ハナモリの入り口のドアをあけて入ってきたさえこに、俺は白衣姿で質問を投げた。
私服姿のさえこは、「え?」と言わばかりの表情を浮かべて、ブーツに手をかけていた。
「私、患者としてきたばかりだし。わかるわけないじゃんねえ」
くすくすと肩をゆらしてさえこが笑った。
だよね、と受付の仕事をしている玲子が相槌をうったのがわかった。
「どこにいくのぉ?」とさえこが俺の背中に声をかけてくる。
俺はドアに手をかけたまま、「くるま」と振り返った。
「問診は?」
「待ってろ。スマホ、探してくるから」
「はあい」
外に出ると、俺は運転席をあけた。パッと見たかんじ、スマホの影は見当たらない。記憶が正しければ、スマホは手に持って降りたはず。
その後、俺はどこに置いたのだろうか。記憶が欠如している。ドアを閉めると、「はあ」と息を吐き出した。
ガラス張りになっているハナモリの入り口から、さえこと玲子が楽しそうに笑っているのが見える。
元カノとこれから落とそうしている女が何も知らずに話しているのは、なんだか変な感じだ。お互いに知らないだろうし、な。知っているのは俺だけ、か。
さえことのキス騒動から、もう半月が過ぎた。が、さえこは相変わらずな態度だ。俺がキスしようとしたことを、記憶から消去したのか?と聞きたくなるくらい、いつも通りだ。
何を考えてるか、わからないところがあるし。もしかしたら、記憶排除という技も持っているのかもしれないな。
年上だし。大人な対応が上手なのだろう。むかつくけどな、そういうの。
俺がハナモリのドアを開けると、玲子とさえこが顔を俺のほうにむけてきた。
「スマホあった?」とさえこ。
「ねえよ」
「どこにいったんだろうねえ。ハナモリから電話してみたら?」
「バイブだから、鳴ってもわからねえ」
「ざんねーん」とさえこが明るく笑う。
たいして残念なんて思ってないくせに。と俺は思わず苦笑した。
「知らなぁい」
ハナモリの入り口のドアをあけて入ってきたさえこに、俺は白衣姿で質問を投げた。
私服姿のさえこは、「え?」と言わばかりの表情を浮かべて、ブーツに手をかけていた。
「私、患者としてきたばかりだし。わかるわけないじゃんねえ」
くすくすと肩をゆらしてさえこが笑った。
だよね、と受付の仕事をしている玲子が相槌をうったのがわかった。
「どこにいくのぉ?」とさえこが俺の背中に声をかけてくる。
俺はドアに手をかけたまま、「くるま」と振り返った。
「問診は?」
「待ってろ。スマホ、探してくるから」
「はあい」
外に出ると、俺は運転席をあけた。パッと見たかんじ、スマホの影は見当たらない。記憶が正しければ、スマホは手に持って降りたはず。
その後、俺はどこに置いたのだろうか。記憶が欠如している。ドアを閉めると、「はあ」と息を吐き出した。
ガラス張りになっているハナモリの入り口から、さえこと玲子が楽しそうに笑っているのが見える。
元カノとこれから落とそうしている女が何も知らずに話しているのは、なんだか変な感じだ。お互いに知らないだろうし、な。知っているのは俺だけ、か。
さえことのキス騒動から、もう半月が過ぎた。が、さえこは相変わらずな態度だ。俺がキスしようとしたことを、記憶から消去したのか?と聞きたくなるくらい、いつも通りだ。
何を考えてるか、わからないところがあるし。もしかしたら、記憶排除という技も持っているのかもしれないな。
年上だし。大人な対応が上手なのだろう。むかつくけどな、そういうの。
俺がハナモリのドアを開けると、玲子とさえこが顔を俺のほうにむけてきた。
「スマホあった?」とさえこ。
「ねえよ」
「どこにいったんだろうねえ。ハナモリから電話してみたら?」
「バイブだから、鳴ってもわからねえ」
「ざんねーん」とさえこが明るく笑う。
たいして残念なんて思ってないくせに。と俺は思わず苦笑した。