今宵、闇に堕ちようか
「施術スタッフ側の掃除場所と受付がやる掃除の場所に食い違いがあるみたいで。一か所、だれも掃除してなかったんです。それを黒野さんに指摘されまして。ここは受付の仕事じゃないから、そっちでやって、と」
 参りました、と乾いた笑いをあげて結衣が目じりをおとした。

『違うの?』とさえこから返事がきて、『夜中に何度もラインがくるんだ。それで寝不足。別に、揉めてねえ』と俺は返した。

 俺の目には、俺に直接攻撃できなくなった玲子と真田が、結衣に標的をかえて苛めるとしか映らない。
 俺に直接やれば、首切りされるから、それを恐れてる。己の勝手な持論で正当化して、結衣をじわじわと責めあげてる。

 あいつら、何をしたいわけ? 俺を苦しめたいのか。辞めさせたいのか。

 真田は俺を辞めさせて、院長の椅子に座りたいのだろう。年齢的にも体系的にも、院長っぽさはある。だが能力が及んでない。

 玲子はただただ俺の気を引きたいだけなのだろう。施術スタッフの中で俺が一番、結衣と親しいから。結衣は施術スタッフを取りまとめている立場だ。仕事の話も必然と多くなる。それが気に入らないのだ。
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