光り輝く命~救ってくれたのは君だった~
兄だって、たくさんたくさん苦しんだんだ

「もういいよ。過ぎたことじゃん。

あたしも一樹は大切なお兄ちゃんだから」

兄の顔は涙でグチャグチャ。

目は真っ赤で、鼻も赤くなっていた。

兄との久しぶりの再会。

もとの仲良し兄妹に一歩近づいた気がした

兄に父を取られた気がして恨んだ

時期もあったけど、今、兄の涙を見て、

すべてがどうでもよくなった。

兄の金色だった髪は真っ黒に、

ピアスもなく、タバコの臭いもしない。

ガソリンの匂いがほのかにあった。

大好きな大好きなお兄ちゃん。

昔と変わらないって言ってくれて、

ありがとう。

でもね、お兄ちゃん。

あたしは昔とは違うんだよ。

汚れてるんだ。

もう昔のあたしじゃないんだ。

卑怯で弱々しくて汚いんだ。

兄との再会も束の間の幸せだった。

兄は仕事に行き独り暮らしを始めたから、

この家にはあたしとあの父だけ。
< 41 / 96 >

この作品をシェア

pagetop