光り輝く命~救ってくれたのは君だった~
でもあたしはお姉ちゃんなんだから、

しかっりしなきゃいけない。

そう自分に言い聞かせ、毎日泣きじゃくる

里奈を抱きしめ励ました。

「きっと大丈夫だから。

昔みたいに戻れるよ」

なんの根拠もない、あたしの戯言。

もう昔みたいには戻れないって、

頭の片隅では理解していたのに。

高校生の兄は友達のところに入り浸り、

家に帰ってくることもない。

兄とあたしと妹の間にも、

いつの間にか確執ができていた。

「夏菜は俺の大事な妹!

いじめたら許さねえぞ!」

「俺は、夏菜も里奈も大好きだよ」

優しかった兄は、もうどこにもいない。

そんな毎日が続くうち、

父はしだいに家に帰らなくなった。

愛し合って結婚したんじゃないの?

愛し合ってあたしたちが

生まれたんじゃないの?




あたしと妹の里奈は母に連れられ、

今まで住んでいた一軒家を出て

小さなアパートへ引っ越した。

里奈の大事にしていたグランドピアノは

中古で売りに出された。

里奈がお父さんに買ってよらった

大事な大事なグランドピアノ。

里奈がピアノをひいている姿を

見ることは、もうないんだ。
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