光り輝く命~救ってくれたのは君だった~
グランドピアノが引き取られていくとき、

里奈の目には涙が浮かんでいた。

ピアノが大好きな里奈。

グランドピアノを父に買ってもらったとき

の里奈の顔を思い出すと、胸が痛んだ。

大切なものが、どんどん失われていく。



父と別居を始めてから、専業主婦だった

母はあたしたちを養うため、

昼はパート、夜はスナックで働く毎 日。

しだいに家族の会話も減っていった。

母は帰って来てはタバコを吸い、

酒を飲み、愚痴をこぼしてばかりいた。

「あんたたちのせいよ。

あんたたちがいなければ、

こんな目に遭わなくて済んだのに。

お願いだから消えてちょうだい!」

何度、この言葉を投げかけられただろうか

何度も何度も罵られても、

母を嫌いにはなれなかった。

そして父のことも。

あたしは現実を受け止められなかった

だけかもしれない。

家族は本当にバラバラになり、

自分の居場所すらなくなってしまった。



そんなある日、いつものように

酔っ払って帰ってきた母に罵られた。

「夏菜、あんたは本当にクズね。

里奈みたく勉強もできなきゃ

取り柄もない。あんたなんか産まなきゃ

よかった!あんた見てると、あの人を

思い出して腹が立つのよ!

あたしの前から消えなさい!

あんたなんか、いらない!」
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