光り輝く命~救ってくれたのは君だった~
あたしと百合はさとみの手を握り、

病院に向かった。

長い長い……。そしてつらい道のり……。

中絶手術に向かうさとみを見送った。

その背中はとても小さくて、

今にも倒れそうなくらい弱々しかった。

「夏菜ちゃん、百合ちゃん、ありがとね」

さとみのお母さんは、すすり泣きながら

一言そう言った。

手術は短期間で終わりら担架に乗せられた

さとみが病院に運ばれて行く。

麻酔のせいか眠っている。

さとみは、なんの夢をみているんだろう。

ベッドの上のさとみは泣いていたのか、

涙の跡が残っていた。

あたしも百合もさとみのお母さんも、

なにも言わずにさとみを見守っていた。

さとみのお母さんはあたしと百合に

りんごジュースを買ってきてくれたけど

飲まないままジュースは

手の中でぬるくなっていった。

しばらくして、さとみは目を開け、

辺りをキョロキョロ見回し始めた。

「さとみ?」

あたしは声をかけた。

「赤ちゃん、もういないんだね……。

産みたかったな……」

小さな声でつぶやいた。
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