春はキミ
私は、コツンっと秋乃の頭を叩いた

「もう、生意気なこと言わないの」

こんなのただの照れ隠し

本当は嬉しくてたまらないんだ

「…あのー、綾音?秋乃?
そろそろ行きますよ?」

遠慮がちに話しかけてきたのは

今日は仕事が休みらしいお父さんだ

にこにこ笑って穏やかなお父さん

人付き合いが上手く、近所の人に好かれている

垂れ下がった目が、余計に優しそうな雰囲気を出している

「じゃ、ありがとね、薫!」

「ん」

家まで送ってもらったお礼をしっかりとし、車に乗り込もうと思った時

「………からな」

どこか低い声が聞こえた

お父さんと薫が話していたみたいだった

薫の顔が青ざめていた

代わって、お父さんはにこにこと笑顔のままであった

(お父さん、変なこと言ってなきゃいいけど…)

不安な気持ちを抑え、病院に向かった
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