Treasure
第一章

告白

3ヶ月前―――


まだ、春の香りが漂う6月。
梅雨真っ最中の象徴である、ジメジメした日とは裏腹に、
梅雨の季節には似合わない、太陽が雲から覗き、丁度いい光を降り注いでいた日。
中庭にそびえる、青々しい緑の葉が生い茂る桜の木の下。

その木の下には、2人の男女が立っていた。
男は顔を真っ赤にしていて、
女は腕をくみ、イライラとしていた。



あたしの名前は、遠野百合。
林藤高校の2年生。
目の前に居る男子は、同じクラスの小城刹那。
お祭り系が大好きな、バカな男子。

ウキウキ気分で帰ろうとしていたところを呼び出され、イラつきが溜まる。
呼び出したくせに、何も話さない。

いい加減、あたしもキレてきた。



「あっあの、あのな? 遠野…俺な……」


…何こいつ。
かなりの挙動不審やないん?

白い目で見るあたしをよそに、話を続ける刹那。


「俺さ…俺……」


はいうざい。
こういうの、かなりない。


「いい加減にしてくれん? 帰りたいんよ」


この一言が、効いたみたいだ。

刹那は、息を深く吸い込んで、言葉を発した。

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