だれも知らない
「お~い、時矢~!華さん達待ってくれてるぞー!!」
先ほどから店の前に立っていた日向が
中から出てきた二人の女と何やら話をしていたかと思うと
こちらに向かって大きく手を振った。
「俺もう行かないと。」
「本当にありがとうございましたっ」
「あっキミ名前は?」
さっきしたようにピクリと肩を揺らすと
彼女は控えめに答えた。
「…………み、美優です。」
「美優ちゃんかぁ」
この短時間で気付いた事がひとつだけある。
「それは本当の名前?」
「え?」
ビックリしたように大きな瞳で俺を見つめる彼女。
「おぉ~~い!とーきーやー!!」
「まぁいいけど。じゃあまたね”美優ちゃん”」
最後にもう一度、とびきりの営業スマイルを彼女に向けて
先ほどからしつこく俺を呼ぶ日向の待つ”Club Shine”へと戻る。
彼女は嘘をつくのが苦手なようだ。