恋愛感染エクスタシー
誘う左手、暴かれた欲望

そこには、何の感情も存在しなかったはずなのに。


ただの友達。

そう思っていたはずの蓮の車で、衝動的に芽生えた欲望をどう処理したらいいのか分からなかった。



「遅くなっちゃったな」

「……うん」


蓮の発する言葉も上の空。

私の視線は、シフトレバーを握る蓮の手から離せなくなっていた。


マニュアル車なんて、ここ数年、乗せてもらったことがなかったせいか、その男らしくも華麗な手さばきが、私を虜にしてしまったらしい。

骨ばった手がシフトチェンジする度に、鼓動が蓮を求めてしまう。


その手が私の髪を撫でるとき。
その手が私を抱き寄せるとき。
その手が私の素肌に触れるとき。


色欲にまみれた妄想から抜けられなくなる。

窓の外を包む暗闇は、二人きりの空間を一層濃密なものにした。

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