麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「大巫女様!」
神人だという青年ディセルを連れて、セレイアは謁見室に現れた。
彼女が神殿に顔を出すのは実に数週間ぶりだ。
まだ目は腫れているが、その目には強い意思の輝きが宿っている。
「このディセルには、霧を虫に変える力があるんです。
その虫を倒せば、霧を消すことができます。そしてそうすることで、ディセルの記憶も蘇るみたいなんです」
「そんな力は聞いたことがありません」
ハルキュオネは冷たい声音で返事を返す。
それにセレイアは一瞬怯んで唇を引き結んだが、すぐに身を乗り出してきた。
「大巫女様、ヴァルクスの敵討ちに、行かせてください。それが叶ったら…」
「…叶ったら?」
「ヴァルクスの死を、公表してください。この国のためには、隠し続けることが良策とはとても思えません」
幼い頃より世話をし、ずっと見守ってきた少女セレイア。
彼女は今、深い悲しみから、自分の力で立ち上がろうとしている。
敵討ちは、彼女の中のけじめなのだろう。
「だめです。
大巫女として、姫巫女をそのような任務に送り出すことはできません」
ハルキュオネが凛と声を響かせると、セレイアが情けない顔をした。
「そんな…」
「けれど。有給休暇の間に何をしようと、それは私のあずかり知るところではありません」
「大巫女様…!」
ぱあっとセレイアの表情が輝き、ハルキュオネは内心で嘆息した。
なんてわかりやすい娘なのだろう。
それが吉と出るときはよいのだが…。
「ありがとうございます大巫女様!」
かくしてセレイアとディセルは、ヴァルクスの仇である黒い毒の霧をめざして、旅立つこととなったのだった。
神人だという青年ディセルを連れて、セレイアは謁見室に現れた。
彼女が神殿に顔を出すのは実に数週間ぶりだ。
まだ目は腫れているが、その目には強い意思の輝きが宿っている。
「このディセルには、霧を虫に変える力があるんです。
その虫を倒せば、霧を消すことができます。そしてそうすることで、ディセルの記憶も蘇るみたいなんです」
「そんな力は聞いたことがありません」
ハルキュオネは冷たい声音で返事を返す。
それにセレイアは一瞬怯んで唇を引き結んだが、すぐに身を乗り出してきた。
「大巫女様、ヴァルクスの敵討ちに、行かせてください。それが叶ったら…」
「…叶ったら?」
「ヴァルクスの死を、公表してください。この国のためには、隠し続けることが良策とはとても思えません」
幼い頃より世話をし、ずっと見守ってきた少女セレイア。
彼女は今、深い悲しみから、自分の力で立ち上がろうとしている。
敵討ちは、彼女の中のけじめなのだろう。
「だめです。
大巫女として、姫巫女をそのような任務に送り出すことはできません」
ハルキュオネが凛と声を響かせると、セレイアが情けない顔をした。
「そんな…」
「けれど。有給休暇の間に何をしようと、それは私のあずかり知るところではありません」
「大巫女様…!」
ぱあっとセレイアの表情が輝き、ハルキュオネは内心で嘆息した。
なんてわかりやすい娘なのだろう。
それが吉と出るときはよいのだが…。
「ありがとうございます大巫女様!」
かくしてセレイアとディセルは、ヴァルクスの仇である黒い毒の霧をめざして、旅立つこととなったのだった。