麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
数刻も空をゆくと、行く手に鬱蒼とした森が見えてくる。

どこか全体に淀んだ空気をまとったその森は、いかにも不吉だった。

空中戦になる可能性もあるため、プミラを連れて森に入った。

頭上は鬱蒼と生い茂る木々のカーテンに閉ざされ、光は射さない。けもの道のような細い道が、曲がりくねりながら続いている。まるで死の国に通じているような、暗い道だ。

虫や獣たちの声が聞こえることだけが、この森が「生きて」いることの証のような気がした。

この森には雪は無いようだった。

だが、足元はひどくぬかるんでいるので、降ってもすぐに溶けるといったところだろう。

今のところ霧の気配はない。

「あ、リスだわ」

リスだけではない。オオヤマネコも木陰から顔をのぞかせた。

霧が現れる前は、それなりに人の訪れる美しい森だったのかもしれない。

そんなことをディセルと語り合いながら歩いていると、目の前の茂みががさりと揺れた。

またリスだろうかと目を凝らすと、茂みの揺れ方からもっと大きな動物だとわかる。

一瞬武器を構えかけたが、すぐにやめた。

茂みを破って現れたのが、プミラによく似た野生のプミールだったからだ。

白い毛皮は少し汚れているが、十分愛らしい。
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