麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「怪しすぎるわよ! ディセル、こんな奴と一緒になんて、行かないわよね!?」

「でも…あいつなら、俺の過去のことも、いろいろと知っているかもしれない。これは滅多にないチャンスかも」

「それは…そうかも…だけど…」

そうこうする間に吟遊詩人はどんどんと先へ行ってしまう。

小さくなるその背中を見ながら、ディセルが覚悟を決めたように言った。

「ついていってみよう。
セレイア、君のことは俺が守るから」

「…わかったわ、行ってみましょう」

何か不審なそぶりを見せたらすぐにでも槍の錆にしてやると心に近い、セレイアは吟遊詩人の後を追った。

深い森を、茂みをかき分け、進む三人。

道中吟遊詩人は歌うようによくしゃべった。

だが肝心のその内容は、謎かけのようになりすぎていてちっとも理解できなかった。

たとえばこうだ。

「闇の死者が狙うのはなんだと思う? 憎しみの果ての愛か、愛の果ての憎しみか」

「甘い恋のねじれが、新たな旅人を生む。恋に迷いし天からの旅人を」

…いちいち突っ込むのがばからしく思えてくるほどに意味不明なのだ。

時折はっとするようなことも言った。
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