麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「霧がなぜ発生するのか知っているか?」

「なぜ!?」

セレイアが思わず食いつくと、吟遊詩人はにやりと不敵に笑った。

「俺は知ってる。でも教えてやらない」

「…なぁんですってぇ! それなら余計なこと言わないでよね!」

その反応がおかしくてたまらないとでも言うように、吟遊詩人はくすくすと笑う。

「あなたは俺の過去について何か知っているの?
俺の力については知っていたみたいだったけど」

吟遊詩人のペースに巻き込まずにいられるらしいディセルが肝心なことを聞くも、当然、はぐらかされた。

「さあ~ね?」

「あなた何者なの? ディセルの敵か味方か、はっきりしなさいよ。なんのために私たちを案内するの?」

「さあ~ね? それより、なんでお兄さんがこんなところにいるか、教えてほしいかい?」

ディセルの瞳が険しくなる。

「そんなことまで知っているの」

吟遊詩人は心底から楽しそうに答えを告げた。

「ヒントをあげよう。“逃げ出してきた”」

「……。何から?」

「それはまだヒミツだ」

思わせぶりな発言。

自分とはすこぶる相性が悪い、とセレイアは思った。
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