麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
森に夜が訪れた。

二人がかりで鉈を使い、なんとかテントを広げられるスペースを確保すると、二人でテントを組み立て、寝袋を広げた。

テント設営の時、二人の指先が触れ合う事件があった。

ディセルはどきりとした。

セレイアもわずかに頬を上気させ、やや驚いたような表情をしていた。

けれどすぐに、痛みにも似た感情がその顔をよぎり、ディセルは後悔した。

だから、触れられないのだ。

想いを打ち明ける以前に、セレイアはもう、傷つきすぎて、恋をすることが、できないのだ…。

夕食をとりながら、空を見上げる。

かなり開けた場所をみつけることができたので、二人の頭上にはちゃんと空が見えたのだ。

まさしく、満点の星空。

濃紺のキャンバスの上、輝く乳白色の靄まではっきりと見える。

「きれいね……」

今まで見たどんな夜空よりも美しい、星空だとセレイアは思った。

「ディセルみたいにきれい」

セレイアがため息のようにつぶやくと、ディセルはとても複雑な気持ちになった。

きれいだなんて、思われなくていいと思った。

もっと違う…違う感情を、向けてほしいのだと。

けれどそれを言うことができず、ディセルはただ黙って、星空をみつめるセレイアをみつめていた。

その青い瞳にきらきらと映る星空。

その星に、願う。

ずっとそばにいたいと。

きっとそれは叶わないと頭の片隅でわかっていても、そう願わずにいられなかった。
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