麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
黒い霧が漂ってきたことに気が付いたのは、その翌日のことだった。

雪原に冷気が漂うようにひそやかに、それは訪れた。

しっとりと肌にまとわりつくような、不気味な霧。

二人の視界がすぐに暗くなる。

明らかに今までの霧と何かが違うのがわかった。

これこそ“毒の霧”だ。

いい加減森の奥地ゆえ、いつ毒の霧が現れてもおかしくないと緊張感を持って歩いていた二人は、目を見合わせてゴーグルを身に着け、身構える。

「勝負よ!」

セレイアは涙のにじんだ瞳で霧をにらみつけた。

黒く不吉な霧は、否が応でも、ヴァルクスが霧に犯されてしまったあの日を思い起こさせたから。

「霧よ…形となれ!」

ディセルの声に反応し、黒い霧が目の前に凝縮していく。

なんといっても毒の霧の正体だ。

どんな巨大な虫が現れてもおかしくない。

固唾を呑む二人の前に、それは姿を現した…。
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