麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
第七章 仇との決戦
1
目の前に現れたのは、初めて倒した甲虫とそう大きさの変わらない甲虫だった。
ただ、以前に倒したものが紫色だったのに対して、こちらは羽も体も黒々としてより不気味である。たくさんの足がうごめき、グロテスクだ。
こんな虫に、ヴァルクスは。
そう思うと悔しくて涙がこぼれそうだった。
だが、泣いている場合ではない。
セレイアは涙を乱暴に拭うと、決着をつけるために槍を構えた。
「どこからでもかかってきなさい!」
その声に反応するかのように、甲虫がぶんぶんと羽ばたく。
しかし―
こちらに向かってくるかと思われた甲虫は、逆に少し下がり、そして…。
セレイアは我が目を疑った。
ちらりと確認したディセルの表情で、目の前のこれが自分だけ見ている幻ではないと確信する。
幻ではない。
けれど、幻としか思えない。
なぜなら、甲虫がみるみるうちに“分裂”し、今や十体にまでその数を増やしていたからだ。
十倍になった羽音が森に響き渡る。
―分裂する虫など、聞いたこともない!
けれど実際に分裂したのだ。
相手はヴァルクスの仇、そんなことで怯んではいられない!
ただ、以前に倒したものが紫色だったのに対して、こちらは羽も体も黒々としてより不気味である。たくさんの足がうごめき、グロテスクだ。
こんな虫に、ヴァルクスは。
そう思うと悔しくて涙がこぼれそうだった。
だが、泣いている場合ではない。
セレイアは涙を乱暴に拭うと、決着をつけるために槍を構えた。
「どこからでもかかってきなさい!」
その声に反応するかのように、甲虫がぶんぶんと羽ばたく。
しかし―
こちらに向かってくるかと思われた甲虫は、逆に少し下がり、そして…。
セレイアは我が目を疑った。
ちらりと確認したディセルの表情で、目の前のこれが自分だけ見ている幻ではないと確信する。
幻ではない。
けれど、幻としか思えない。
なぜなら、甲虫がみるみるうちに“分裂”し、今や十体にまでその数を増やしていたからだ。
十倍になった羽音が森に響き渡る。
―分裂する虫など、聞いたこともない!
けれど実際に分裂したのだ。
相手はヴァルクスの仇、そんなことで怯んではいられない!