麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「ディセル、何体かお願いできる!?」
「…やってみる!」
ディセルがそばで剣を構えるのがわかった。
彼に剣の心得はないと聞いたが、振り回すだけでも貴重な戦力となるため、所持してもらったのだ。
十体に数を増やした甲虫が、一斉に襲い掛かってくるのだから、一人では対応しきれない。二人はそれを当然のこととして身構えていたのだが、現実はそうはならなかった。
甲虫たちはなんと、それぞれ別の方向へと散り、一目散に逃げていったのだ。
―逃げる…!?
このままではすべて見失うと仰天したセレイアが、咄嗟に槍を投げる。
槍は一匹の体を貫通し、木の幹に突き立った。
だが…
おかしなことに槍はただ甲虫の体をすっと“素通り”したような感じだった。
幻のように一体の甲虫の姿が消え、そこには突き立った槍だけが残っている。
「一体、倒した…?」
「―違うみたいだ、セレイア。
記憶が何も蘇ってこない」
ディセルの険しい声に、セレイアは納得する。
甲虫は分裂したのではない。分身したのだ。
十体もいるように見える中から、本物を一体だけみつけなければならない。
どうやらそういうことらしい。
「…やってみる!」
ディセルがそばで剣を構えるのがわかった。
彼に剣の心得はないと聞いたが、振り回すだけでも貴重な戦力となるため、所持してもらったのだ。
十体に数を増やした甲虫が、一斉に襲い掛かってくるのだから、一人では対応しきれない。二人はそれを当然のこととして身構えていたのだが、現実はそうはならなかった。
甲虫たちはなんと、それぞれ別の方向へと散り、一目散に逃げていったのだ。
―逃げる…!?
このままではすべて見失うと仰天したセレイアが、咄嗟に槍を投げる。
槍は一匹の体を貫通し、木の幹に突き立った。
だが…
おかしなことに槍はただ甲虫の体をすっと“素通り”したような感じだった。
幻のように一体の甲虫の姿が消え、そこには突き立った槍だけが残っている。
「一体、倒した…?」
「―違うみたいだ、セレイア。
記憶が何も蘇ってこない」
ディセルの険しい声に、セレイアは納得する。
甲虫は分裂したのではない。分身したのだ。
十体もいるように見える中から、本物を一体だけみつけなければならない。
どうやらそういうことらしい。